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踏ミ出シタソノ足ハ

踏ミ出シタソノ足ハ<第五話>

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【5】

 学校に早めに着くと、清々しい気分だった。まるで生まれ変わったような具合だ、世界が違って見える。すべてが肯定的に捉えられる。
 まだ始めてみただけだけれど、それだけで私の中には「変わり始めた」という実感が渦巻いていた。きっかけは、飯岡の『でも、絶対に探してみせるよ』という言葉だ。それを聞いていなければ私は、一歩を踏み出せないままずっと生きていただろう。
 ――私は、彼に憧れている。
 その言葉がストン、と胸の中に落ちる。そうだ、私は彼のようになりたいのだ。新しいことにどんどんと挑戦していき、自分から動いて、人を変えていく。そんな人に。
 昼休み。啓とは離れて、飯岡と二人で話し合いをした。次から始める、クラスの出し物案募集について。司会は飯岡、板書が私ということになった。てきぱきと話を進めていく飯岡に、思わず言葉がこぼれていた。
「凄いね、飯岡は」
 勢いをそがれたように、飯岡が「え?」と聞き返した。
「いろんなことにどんどん挑戦して、行動して。凄いよ、ホントに」
 ――憧れる。
 その一言を告げると、飯岡が照れたような表情を見せた。
「神井から、そんな風に言ってもらえるとは思ってなかった」
 意図を汲み取れず、首をかしげてみせると飯岡が慌てたように続けた。
「神井って、勉強できるし、とりあえずなんでもできるっていうタイプじゃん? オレ、何も出来ないからさ」
「ううん、挑戦できてる時点で凄いって」
「それなら、神井だって同じだから」
 それに対して、私はまた首を横に降った。――私が、これに参加できたのは、飯岡のおかげだから。その言葉は、さすがに恥ずかしすぎて口には出せなかった。
「違わねぇよ」
 そう、少し怒ったように飯岡が言った。それは、なぜか自分を責めているようでもあった。けれど、私はまた首を横に降った。口には出せない感謝を、なんとかして伝えようとして。
 もう一度同じ応酬をした後、ふたり揃って吹き出した。
「よし、続けよう」
 飯岡が手をたたき、私が頷いた。そんな距離感が、やけに心地よかった。

 それから一週間は、申請用の書類などを揃えているうちに過ぎ去った。
 ずいぶんと、変則的な一週間のなかで、でも、毎朝朝日を見るのは止めなかった。
「なんか、変わったね。急に明るくなったじゃん」
 作業がある程度落ち着いた金曜日の昼休み、久しぶりに啓と昼ご飯を食べた。相変わらず、手作りの弁当は美味しそうで、それをすました顔で食べる啓も相変わらずだ。
「そうかな」
 こちらもすまして返すと、「そうだよ」とぶっきらぼうな返事がある。
 つまり、これまではそんなに明るくなかったということだろうか。淡々と箸を運ぶ啓に尋ねると、
「そりゃ、そんなに楽しそうな顔をしてるのを見たの、初めてだよ。まぁ、付き合いまだ一年ないけど」
 不機嫌そうに返ってきた。
 その原因がわからず、私は首をひねった。そのまま自分の弁当に視線を落とし、カツカレーであることを確認する。今日も美味しそうだ。
「ねぇ、飯岡ってどんなヤツ?」
 声に反応すると、啓がいつの間にか箸を置いてこちらを見ていた。
「どんなって、凄い人だよ」
「凄いって、どんなところが?」
「どんどんなんでもやっちゃうところかな」
 文化祭に向けた話し合いの合間に、いろいろとこれからやっていくつもりのことを話してくれた。地域の祭に参加したり、部屋を改造したり。勉強も、予定を決めてやろうとしているらしい。
「ふうん」
 啓が、どこか意味ありげに呟いた。
「なんで、そんな事聞いたの?」
「え?」
「だから、なんで飯岡のこと聞いたの?」
 その意味を知りたくて、問い詰める。けれど、啓は「何でもない」と口を割らなかった。




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