スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←踏ミ出シタソノ足ハ<第二話> →踏ミ出シタソノ足ハ<第四話>
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  • 【踏ミ出シタソノ足ハ<第二話>】へ
  • 【踏ミ出シタソノ足ハ<第四話>】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

踏ミ出シタソノ足ハ

踏ミ出シタソノ足ハ<第三話>

 ←踏ミ出シタソノ足ハ<第二話> →踏ミ出シタソノ足ハ<第四話>



【3】

「ええと、神井さんだよね」
 授業が終わり昼休みに入った途端、飯岡が机の前までやってきた。
 答えずにただ頷くと、手を差し出してくる。握手のつもりらしい。予想以上に大きくて暖かいその手を握ると、飯岡は嬉しそうに笑って、ブンブンと手を上下に振った。座ったままの私には、結構キツい体制だ。
「――でさ」
 飯岡が、手を離してからそう切り出した。
「夏休みが始まる前には、クラスでなにするか決めときたいんだけど、それについて今日の放課後話さねぇ? これからの予定とかさ」
 ふと疑問に感じて、質問を質問で返した。
「部活は?」
 見るからに運動系、といった外見の飯岡はなにも部活に参加していないのだろうか。すると、飯岡はすこし恥ずかしそうに頭をかき、
「オレ、帰宅部。中学まではサッカー部だったんだけど、高校に入ってからはいろんなことに挑戦したかったから、止めた」
〝いろんなことに挑戦したかったから〟いう理由がなんだか彼のイメージにぴったりだった。
「分かった、でもいろいろとあるから放課後は五時まで。基本的に昼休みに話し合って、放課後家で作業をするっていうのでどう?」
 実際は、勉強以外に何をやっているわけでもない。けれど、突然生活の中にいろんなことが入り込んでくるのを、どこか阻止しようとしていた。自分でも気づかないくらいわずかに、声が棘を含む。
「いいよ。実際にどこまで出来るかわからないけど、最初はそれで始めて見ようぜ」
 飯岡は全く意に介さないようで、あっけらかんと同意した。外見通り、鈍感なのかもしれない。
「じゃ、放課後にまた」と言い残し、飯岡は踵を返した。
「また」と私もその背中に返した。
 ふうと一息ついていると、
「なにがあったの?」
 すぐ後ろから、低い声がした。それに伴い、背中をツゥーっという感触が走る。悪寒が背中をぞくっと走り、私は小さく声をあげて、飛び上がった。
 そこにいたのは、啓だった。睨むと、すました顔で手に持った弁当箱を振る。
「一緒にご飯、食べよ」
 振った弁当箱の中身は大丈夫だろうかと心配になった。
 ガタガタと机を寄せて、啓と昼ご飯を食べる。見るからにおいしそうな啓の弁当は、すべて自分で作っているそうだ。本人曰く「家族に作らせたら不味い」かららしい。
「それで、もう一度聞くけど――なにがあったの? まさか紗綾が恋とか言うんじゃないよね」
 視線をそらしてご飯を食べる私に、啓が目力を強めて言った。肩より少し下で揃えられた髪が、少し揺れて、止まった。
「別に……なにも」
 そう口ごもり、また自分の弁当に突撃する。今日は、三色弁当だ。鳥そぼろと卵、それにサヤインゲン。色彩がきれいなので、好きなものの一つだ。
「嘘つけ」
 啓がばっさりと切り捨て、自分の弁当に箸を伸ばした。と、それをやめ、そのまま箸で私を指す。
「紗綾が、急にこんなメンドクサイものに立候補するわけがないじゃん」
 ぐさりと急所を突かれ、私は思いっきりご飯を口の中に詰め込んだ。「すごい顔になってるよ」、と啓があきれた声で言う。「うるひゃい」、飲み込みながらしゃべると、変な声になった。
 啓は言うことに容赦がない。けれど、どこか包容力があって、そこが私と気が合う要素の一つなのかもしれない。
「うん。確かにメンドクサイ。正直参加しなくていいと思う、文化祭とか。って思ってた」
 そう言うと、啓は眉をひそめた。
「なら、なんで立候補したの?」
「なんでだろ……」
 あの時は、何かがおかしかった。
 そうすることによって――、
「なにかが、変わるかもしれないって思ったから、かな」
 言ってから、自分が口に出したことに気付いた。けれどもう遅い。すでに啓の耳にはその言葉が届いてしまっている。
 なに恥ずかしいことを言っているのだろう。
「あ……いや、そんなことは」
 慌てて否定しようとするものの、時すでに遅し。啓は私の顔を、見つめていた。バッチリ聞かれたに違いない。
 しばらくの沈黙ののち、
「ふうん」
 啓がやけに明るい声でそう言った。そして、視線を弁当の方に移して、攻撃を始める。
「なら、いいんじゃない? 頑張ってみれば」
 口にご飯を詰め込みながら「私も、応援するよ」そう呟く。
 予想外の答えに、手から箸が一本落ちた。クールな啓がそんな事を言うとは信じられず、箸も拾わずに顔を見つめる。頬が少し赤くなっていた。
 今度は、私が、
「すごい顔になってるよ」
 という番だった。
「うるひゃい」
 やはり変な声で、啓は答えた。その声は、どこか照れ隠しのようだった。
「私だって、少しは変わりたいって思ってる」
 やがて、咀嚼し終わると啓がぼそっと言った。その耳が真っ赤になっているのを私は見逃さなかった。








<第四話へ>
関連記事


  • 【踏ミ出シタソノ足ハ<第二話>】へ
  • 【踏ミ出シタソノ足ハ<第四話>】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【踏ミ出シタソノ足ハ<第二話>】へ
  • 【踏ミ出シタソノ足ハ<第四話>】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。