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踏ミ出シタソノ足ハ

踏ミ出シタソノ足ハ<第二話>

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【2】

 次の日、HR《ホームルーム》で、文化祭の話題が出た。
 私達がこの学校にいる間に関わる、卒業式を除けば最後の行事だ。十一月の三週目。体育祭の三週間後に行われる、学校で一番大きく盛り上がる行事。
 しかし、クラスのテンションは低かった。私もそうだ。正直なところ、ここで最後に盛り上がってどうするというのだろう。
 そもそも、センター試験を受ける人にとってはちょうど追い込みの時期だ。悠長に文化祭の準備とかをしているような時期じゃない。
「あー、実行委員を二人決めて、そいつらに進行を任せようと思う」
 すこし髪の生え際が後退している、いたって地味な担任が言った。そして、チョークを持つと黒板に向かい、
「立候補。それで人が足りなかったら、推薦な」
 それから、ほれ、と顎で私達を促した。クラスが、控えめにざわつき始める。その内容は、主に消極的な言葉か、誰かやってくれる人に丸投げしようとする責任放棄のつぶやきだ。
 その時、ハイっ、と鋭い声が上がり手を上げたヤツがいた。
 それは、チビだった。
「おお、イイオカか」
 先生が、読みにくくも読みやすくもない文字で、黒板に『飯岡』と書く。そして、下線を引いてその名前を強調しながら、「ヤル気があるのはいいが、勉強もおろそかにするなよ」と釘を刺すように言った。
 それを聞いて、ますます私の心は冷えていった。
 盛り上がる一部の男子と、頭をかくチビ――もとい飯岡。それらがすべて、冷たい氷の檻の中に閉じ込められているかのようなそんな錯覚があった。どうせ、こんなテンションじゃ、楽しい文化祭にはなりやしない。いっそのこと、なにもせずに他のクラスの催しを楽しんだほうがずっといい。
 しかし、心が冷えていく一方で、どこか高揚した気分が私を支配していた。これで委員になれば、私は変われるかもしれない。飯岡と一緒にいれば、きっと、ここから新しい私を始められる。
 ――こんな自分は嫌だ。ただ惰性のように活きる自分は。
 心の底で、そんな理想を唱え続ける自分。それを、初めて肯定してみようと思った。

 ――はい、やります。

 そう手を上げて言った自分の声が、やけに遠くの音のように聞こえた。
 クラスが静まり返る。
 私を、ひとりが見た――みんな見た。視線が集まっているのが分かり、一気に心臓の鼓動が跳ね上がった。ふと、同じく立ったままだった飯岡と視線が合う。飯岡は、ただ楽しそうに、ニヤッと笑った。
「あー、カノイか。かのい、かのい……と」
 担任は、ダルそうな基調で総つぶやきながら出席簿を見つめ、「ああ」と呟いた。
「こうか」
 そして、黒板に『神井』と書いた。
 私と、飯岡の名前が黒板に二つだけ並んで書かれている。
「あー、じゃあうちのクラスの文化祭の担当は、神井と飯岡の二人でいいな」
 これ以上書き加えるつもりがないのを強調するかのようにチョークをおき、担任がクラスを見渡して静かに言った。誰も答えなかった。ただ、どこから始まったのか、ぱちぱちという拍手の音が一気にクラス全体へと広がった。
 それは、どこか空虚感を感じさせる音だった。






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