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週一短編企画

《第一回》『タイトル未定』――(プロローグ)

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〈プロローグ〉


 シャリシャリとストローの先で氷を潰していた親友が、ふと顔を上げた。
「なんか懐かしくねぇ?」
 そういって視線だけで示してみせるのは、隣のテーブル。
 中学生くらいの男子の二人組が陣取り、そこで激論を交わしていた。つまり、喧嘩だ。
 駅前のファーストフード店。
 真夏の店内は効き過ぎるほどクーラーがかけられていて、昨今の節電事情はどうなっているのか疑うほどだ。ガラスのドアを通して、外のわずかな木々で盛大に鳴くセミの声が聞こえてくる。
「ああ」
 ぼくは苦笑した。
 親友とぼくは、中学のころ一度大きな喧嘩をしたことがあった。きっかけは、今から思えばバカらしくなってしまうような、本当に些細な事で、けれどもそのおかげで二ヶ月以上口を聞かなかった。
 その時のことを思い出しているのだろう。
 間抜けな顔で、ずずっと底に溜まった薄いジュースを吸い込んでいる親友を見ながら、ぼくもそのときのことを思い出した。
 そういえば、まだ話していない。
 伊勢で出会ったじいさんと少年たちのことを。
 ちょっと気恥ずかしさもあって、これまで三年以上、ずっと話さずにいた。
「なぁ、今年の年末、どうする?」
 ちみちみとポテトに伸ばしていた手を止め、ぼくは聞いた。
「年末? いくらなんでも、気が早くね?」
「あと四ヶ月後だぜ。そんなに会えないんだし、あっという間だって」
 それぞれ違う高校に進学した僕たちは、こうして一ヶ月に一度ほど会合を開いている。
「そりゃそうだけどさ」
 釈然としない様子の親友を捨て置き、僕は話をすすめる。
「伊勢、いこうぜ」
 親友はポカンと口をあけた。
「でも、お前、パワースポットとかバカらしい、特にその中心地とかはなおさらだって……」
「何年前の話だよ」
 それは三年ほど前のことのような気がする。
「それに、ちょっと紹介したい人がいるんだ」
 今年もあのじいさんは、子供たちを引き連れて来ているのだろうか。あの巨大ハエタタキでモチを焼いているのだろうか。
「ふうん、そうか。分かった」
 親友は、それ以上追求せずうなずいた。
「いいよ。久しぶりに夜のお伊勢さんもいってみたいし」
「……え? 夜の伊勢神宮って珍しいのか?」
 なにいってんの、という顔で親友はぼくを見た。
「あのな、普通は夜の参拝は出来ないんだって。年末年始と、いくつかの行事が特別」
「マジか!」
「マジマジ」
 神妙な顔でうなずき、親友はぼくのポテトに手を伸ばした。
 それを全力で阻止する。
「やらねぇよ」
「――ケチ」
「なんとでもいえ。ただし、ポテトだけは譲らねぇ」
 そんな軽口の応酬をする。
 久しぶりに会った、親友との会話はやはり楽しかった。今ではいつでも連絡が取れて、そんなに距離を感じなくなったけれど、離れた当時はもう二度と会えないのではないかと思ったことを覚えている。
 あの二ヶ月間。
 親友はどのように過ごしていたのだろうか。
 お互いに暗黙の了解のように避け合っているテーマなので、まだ聞いたことも話したこともないけれど、そろそろいいだろう。年末、電車の中でゆっくりと話すとでもしようか。
 自然とテーブルに落としていた視線を上げ、親友を見る。
 トレードマークだった古い阪神のキャップは、いつのまにか、新しいものへと変わっていた。



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