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 ←On the Top of That Mountain《間章1》【第十二話ノ壱】 →バトンに挑戦です!
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On the Top of That Mountain(長篇)《連載中》

On the Top of That Mountain《間章1》【第十二話ノ弐】 最終話

 ←On the Top of That Mountain《間章1》【第十二話ノ壱】 →バトンに挑戦です!
 久しぶりに来た夏祭りの会場は、あの時と変わらずにぎやかで人の声に満ちていた。
 どうやら盆踊りはまだ始まっていないようだったけれど、それの準備をしているところに出くわし、おもわず顔が引きつった。姉さんはそれを見て楽しげに笑い、
「あれ? 手伝いたそうな顔をしてるねぇ……」
 なんていじわる気に言う。
 するとそれを聞きつけた作業中のおじさんが、
「お! ちょうどいいところに若いのがいるじゃないか、ちょっとあれとって」
 と突然手伝わされる羽目になった。
 なんで僕が……と恨めし気に姉さんを見つめると、爆笑している。
 なんつーひどい奴だろう。
 
 いろいろと運んだりセッティングしたり、としてようやく手伝いが終わると、いつのまにか手にかき氷を持っている姉さんのところに僕は歩いて行った。見る限り、メロンとブルーハワイだ。どっちがいい、と聞くのでメロンを呼びさすと、
「はい」
 そっけなく突き出された。
「焼きソバは?」
 そう聞くと首を横に振る。
「なかった」
「あ……そう」
 定番だと思っていたのだが、土地柄の問題だろうか。
 楽しみにしていただけに、残念だ。
「かき氷とか、結構ひさしぶりだなぁ」
「え……ホント?」
 何の気なしにつぶやいた言葉に、姉さんが乗ってきた。
「うん」
 なぜ食いつくのかと、そこを疑問に思う。
「私なんて、もう夏休みに入ってから数えきれないほどかき氷食べたよ」
「え?」
 今度は僕が驚く番だった。
「どこで?」
「店で」
 短い返事が返ってくる。
 記憶を掘り起こすと、確かに学校の帰りの店に『氷』の暖簾がさがっているところは多かった。いろんな人が群がっていたけれど、僕はそこはスルーしていたような気がする
「むしろ、なんでアンタ、食べてないの?」
「いや、なんとなく……」
 実際はその中に入っていくのが気まずかっただけなのだが、そんなことは説明する必要もないだろう。
 しかし、姉さんはそれを察したように、
「え、なに? 覚治友達いないわけ?」
 そう聞いてきた。
「いや……いるよ」
「じゃあ、なんで一緒にかき氷を食べないの? 普通一緒に食べたりするじゃん」
「そんなのをしないような、友達なんだよ」
 僕は眼鏡をかけた大きな顔を思い浮かべながら言った。
「へぇ……変なの」
 姉さんはそれ以上追及してこない。
 そして、ちらりと腕時計に目を落としたかと思うと、叫んだ。
「あ! 待ち合わせの時間過ぎてる!」
「おいおい」
 やる気のない突っ込みを入れると、
「走って! 狛犬の前!!」
 鋭い命令が返ってきた。
「なんで俺が……」
「もうかき氷食べ終わってるでしょ!」
 ――ごもっとも。
 そう口の中でつぶやき、近くにあったゴミ箱にかき氷の容器を投げ込むと、僕は走り出した。浴衣だけに慣れないけれど、それでも何とかなるレベルだ。これが女性用だったら違うだろうな……と考えて、もしかしたらそれも理由の一つだったのかもしれない、と今更気づいた。
 小さな鳥居の前の狛犬までたどり着くと、そこではすでに浦川とチビ達が待っていた。
「遅れてゴメン」
 乱れた息の間にその言葉をねじ込むと、
「いいよ、私たちも来たところだから」
 という返事と、
『おそーい!』
 という抗議が返ってきた。
 それに頭を下げつつ、
「もう少ししたら姉さんが来るから、もう少しだけ待ってくれる?」
 そんなことを言っているうちに姉さんは到着した。ダッシュした僕とそこまで差なんてない。なら、このたまった乳酸は何のために……。
「ごめん、遅れちゃって」
「ぜんぜんいいですよ」
 そんな会話が終わると、僕たちは揃って立ち並ぶ屋台の間を歩き始めた。

 盆踊りまでにまだ少し時間があるというので、僕たちは屋台めぐりをした。めぐりといっても、冷やかしだけであまり手を出したりはしない。僕と姉さん自身、あまり買うタイプではないけれど、それ以上に浦川たちは――まったくといっていいほど何も買わなかった。
 散々店を巡った挙句に買ったのは袋入りのベビーカステラだけだ。それを三人で回しながら食べている。ちびっ子たちもここでは行儀よく、決してあれ買ってこれ買ってとねだることもない。
 ――不思議な家族だ。
 つくづくそんなことを思った。
 歩いていると、自然と姉さんとチビッ子が前に、そして浦川と僕が後ろになる。おそらく好奇心の問題だろうが、別にそんなことはどうでもいい。姉さんが前に行きながら小さく親指を立ててウィンクしてきたのは、もっとどうでもいい。
 それよりも問題は――浦川としゃべることがないことだった。
 今まで僕たちの会話の間には、必ず姉さんかチビ達かがいたわけで、その人たちがいないとなかなか会話の発展するきっかけもつかめない。
 気まずい。
 気まずすぎる。
 僕が耐え兼ねて前の姉さんに助けを求めようとしたとき、
「その」
 横から静かな声がした。
 浦川だ。
「な、なに!?」
 過剰反応してしまい、声が裏返る。
 それにびっくりしたのか、
「いえ、なんでも!」
 浦川もそう叫んで、また黙った。
 ……やってしまった。そもそもが意識のしすぎなのだろう。いくら変な出会い方をしたとはいえ、普通にしゃべればいいのだ、普通に。
「浦川さんは、こういった場所にはよく来たりする?」
「うん」
 前髪をゆらして小さくうなずいた浦川は、そのあと「紗慧でいいよ」と付け足した、
「いや、それはさすがに気まずいからさ……せめて浦川で」
「分かった、じゃあそれで」
 短く答える彼女の目は、道端の屋台に向いている。
「そういやさ、なんで買わないの?」
 聞いてから、まずい質問をした、と思った。
 案の定浦川は答えにくい顔をして下を向く。それをフォローすることもできず、僕は黙っていた。
「ちょっと……いまお金がないんです」
 そんな答えが返ってきたのは、しばらくの沈黙の後だ。
 僕はほっとして、
「そうかぁ」
 と言った。
 そこで会話は途切れ、また屋台をそれぞれ眺めながら歩いていく。ときおり姉さんやチビ達が足を止めると、その横から見ているものを覗き、また歩き出す。そんなことを十五分もしていると、すぐに一周してしまった。
「ね、どうする?」
 振り返った姉さんが、そんなことを言う。
 いつのまにか懐いたらしいチビ達が、姉さんの足元を走り回っている。僕たちがそろって肩をすくめると、姉さんは時間を確認して、
「盆踊りまでもう少し時間があるし、私はこいつらにかき氷をおごりに行くけど、二人はどうする? せっかくだし、二人でそこらへんでも回ってたら?」
 明らかに、裏に何かのたくらみを感じる。
 いや、別にいいよ、と口を開こうとすると、それより先に浦川が同じようなことを言っていた。
「いえ……別に。奢っていただくのも悪いですし、私もついていきます」
 自分で言おうとしていたのに、言われてしまうと少し残念な気がしてしまうのはなぜだろうか。
「大丈夫。私は、奢りたくて奢ってるわけだし……ね」
 そう言って姉さんがこちらへ視線を送ってくる。もしかして、説明しろということだろうか。めんどくさかったけれど、さっき奢られたかき氷に免じて、説明することにした。
「最近バイトを始めたらしくて。それで給料をもらえたことがうれしくて、奢りたくて仕方がないんだってさ」
「でも……」
 そう言い募る浦川に、姉さんが手を合わせた。
「お願い!」
 それを見てチビ達二人も、その真似をする。
『おねがい!』
「なら……お願いします。すみません、迷惑かけちゃって」
 浦川が小さく息を吐いた。
「任せといて!」 
 姉さんがそう言って、さっそくチビ達を連れて歩き出す。
「山楽さん」
 突然声をかけられたので驚いた。
「え? なに?」
「私たちはどこに?」
「えっと……」
 特に行きたい場所もない。はぐらかして「浦川は?」と聞くと、私は別にどこでも……という答えが返ってきた。
 こういう時には、
「じゃあ、休もうか」
「あ、それいいですね」
 僕たちは神社の中にある小さな東屋へと向かうことにした。もちろん中は人であふれているけれど、その外側にもたれかかる分には問題ない。
「ふう」
 息をつくので、
「疲れた?」
 と聞くと、
「はい、結構」
 と言う。
 まぁ、慣れない浴衣で何分も歩き続けたら疲れるのも当たり前だろう。そんなことを考えていると、僕も疲れたような気がしてきた。体力面というより、精神的でだ。今日は特に、いつもとまったく違う一日だから、かもしれない。
 地元の若いカップルや親子連れが、東屋の前を通っていく。
 にぎやかな音の背景には、少し離れた田んぼから聞こえるカエルや虫の声が流れいる。提灯の灯りで下から照らされた木の幹が少しグロテスクにも見え、その枝の間から半分くらいの微妙な月が顔をのぞかせていた。
「山楽さん」
 聞こえてきたのは、とても落ち着いた静かな声だった。
 どこか大人を感じさせる声だ。
「うん、どうかした?」 
 自分の心の中でどこか気おされている部分を感じながら答えると、
「先週、見てましたよね?」
 相変わらずの調子で浦川が続ける。
 何のことかわからず、一度記憶の引き出しをあけた。
 『先週』『見た』この二つの単語から思い起こせる記憶は――あった。こっそり秘密基地に行った時のことだ。その時僕は、その奥で浦川が泣いているのを見たのだった。正確には見たというより聞いたと言った方が正しいかもしれない。
 僕がそうやっているのを覚えていないことだと認識したのか、浦川がさらに続ける。
「私が泣いていたの、見ましたよね?」
「うん」
 その先に「ごめん」とつけるべきか、「なんで泣いてたの?」と聞くべきか、それとも黙っているべきか。それに悩んでいるうちに、自然と三番目の選択肢を選んだことになっていた。
「どうして、来たんですか?」
 当然それを知る権利があるとでもいうように、浦川が毅然とした口調で言った。初めて出会った時からは考えられないような強い目で、こちらを射抜く。それを受けて僕が黙っていられるはずがなかった。
「ちょっと気になって……本当にそれだけ。秘密基地の中がどうなってるのかも見たかったし、君のこともどんな人なのか知りたかったし――」
 それに、と付け足したのは言うつもりではなかった言葉だった。
「あの場所が気に入ったんだ」
 浦川が目を見開いた。
「気に入った?」
「うん、あそこらへんの、なんかゆっくりした空気がさ」
 あのとき感じたそのままを言葉にした。
 それだけ言ってから、やっぱりそれでも、勝手にあそこを覗いたのは悪かったなあと今更ながら思い返す。せめてあの後、浦川が来るまで待って頼めばよかった。
 しばらくの沈黙の後、ふっとその場の空気が緩んだ――いや、緩んだように感じた。なんでだろうと思い浦川を見ると、笑っている。一瞬目を疑った。なぜこの状況で笑いが浮かぶのだろう。
 わからないことだらけで、混乱する。
 小さく息を呑む音がした。
 浦川がやや緊張したような、しかしどこか安心したような面持ちで話し出そうとしている。どうぞ、と目配せをすると口を開いた。
「あの場所には、むかし私とお父さんが作った秘密基地があったんです。私は――初めて会った時からわかってると思いますけど、すごく怖がりで、そんな私をお父さんは鍛えるって。それで……あの秘密基地を一緒に作ったんです」
 一瞬の空白を開け、浦川はまた話しだす。
「その頃はまだ愛奈も悠斗生まれていなくて、だからずいぶん昔のことなんです。それで――」
 そこでまた言いよどむ。
 なにか言いにくそうにしているので、「無理に言わなくていいよ」と助け舟を出すと「いえ」と首を横に振った。
「話したいんです」
 そう言ってこちらを覗きこむその視線の強さに、僕は思わずたじろいでしまう。
 ふうと、息をついて再び浦川のいろんな感情を押し込めたような静かな声が話しだした。
「お父さんが死んで、それからずっとあの秘密基地には行ってなかったんです。でも、ついこの前すごく懐かしくなって、また行きたいって。それで行ってみたらずいぶんと壊れていて、だから、愛奈と悠斗に手伝ってもらってそこを直して――」
 それが、初めて僕があのちびっ子達に出会った――刃物を振り回しながら山を駆け下りてきたのに遭遇した、あの時のことだろう。
「でも結局その日にはドタバタしていてぜんぜんゆっくりできなかったので、次の日にまた行ったんです」
 そこで言葉は止まった。
 あとは分かるだろう、という沈黙だった。
「……ゴメン。せっかくの懐かしい時間を邪魔して」
「いえ、それはいいんです!」
 謝ろうとすると、浦川が慌てたようにさえぎった。
「私、嬉しかったので」
「嬉しかった?」
「はい、お父さんは、あの場所が大好きで……いつも『こんなにいい場所はないぞ』って、そう言ってました。だから、あの場所を気に入ってくれる人が他にいるって分かって、本当にうれしかったんです」
 徐々に勢いを増してくる浦川の言葉に流されないようにしながら、僕は極めて冷静であろうと努めていた。二人とも感情の波に押し流されていたら、会話が成り立たなくなってしまう。
「でも、僕があの場所が好きだって言ったのは、ついさっきのことじゃ……」
「また、秘密基地に来たじゃないですか」
「それだけ?」
「はい、それだけです」
 そう言い切る浦川の顔には、なにかの確信が満ちていた。
 理由にならないとも思い、でもこんなことに細かい理由を求めるのもおかしいような気がして、次第にどちらでもよくなった。
「ありがとう」
 そう言うと、浦川は目を丸くした。
「なにが、ですか?」
「嬉しかった、なんて言われたの初めてだから。確かにあの場所を気に入ったのもあったけど、それ以上にあんな風に勝手に行ったら、半分ストーカーみたいに思われても仕方がないなって……」
 クスッと笑って、浦川が手を髪に当てた。
「確かに、思いました」
「やっぱり!」
「でも、それ以上に嬉しくて――だから、山楽さんの家にいるときもずっと、話しかけるタイミングを探してたんですよ。なかなか来なかったですけど」
 そこで僕は初めて、ずっと前に言うべきだった言葉を口にした。
「あ、山楽さんとか堅苦しい名前はいいよ。覚治とか、山楽とかなにか適当に呼び捨てにして……」
「じゃあ、山楽で」
 決断は早かった。

 それからしばらく、僕たちは初めて打ち解けたかのようにいろんなことをしゃべった。浦川があの秘密基地を作ったときの話。
 僕が蝉取りに行かされた話。
 そしてふと気づいたら、いつのまにか横に姉さんとチビ達がいて、こちらの話に耳を傾けている。
「ああ姉さん――っていつのまに!」
「アンタが告白したあたりから」
「そんな場面はなかったはずだ!」
 下世話な冗談に抗議すると、「それにしても」と姉さんが真顔で言った。
「やけに仲良くなったね」
 僕と浦川は顔を見合わせて、それからうんと頷いた。確かにいつのまにか、仲良くなっていたのだった。
「そろそろ盆踊りが始まるけど……」
 姉さんがにやりと笑うと、
「行こうよ、山楽」
 いつのまにかため口になっていた浦川が、僕の袖を引っ張る。
「僕は遠慮して……」
『ダメ』
 ささやかな辞退は女性陣によって退けられ、僕は仕方なく会場の方へと足を向けた。
 微妙な形の月は、いつのまにか頭上にまで移動してきていた。

          *

 これが、僕と浦川の出会いで、それからわずか一週間後僕たちは学校で再会を果たすのだが、それはまた別の話だ。
 けれども、実はこの話には先がある。
 盆踊りに連れて行かれ、幸いみんなの前で踊らされることはなかったものの、いまだ健在だったさまざまな音頭に戦慄とした僕。
 その帰り道に、僕は浦川がなぜ今日浴衣を着に家に来たのか、その本当の理由を聞いた。 
 それは、初めて出会った日に、浦川が見ず知らずの僕たちの家にシャワーを借りに来た理由にもつながる――。

 




〈On the Top of That Mountain間章1 終〉










こんばんは。
いろいろとドタバタして更新が遅れました。申し訳ありません。
これで、一月の後半から四か月間連載してきた「On the Top of That Mountain 間章1」は終わりとなります。
これまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

書いている途中で、もしかして「間章」っていう言い方はおかしいかも……とか思ったことは、秘密です。無難に番外にしておけば良かったかもしれません。

さて、特に最後に落ち着くところも決めず書き始めたこの物語でしたが、意外な浦川の過去が次々と頭の中に浮かび上がってきて予想以上に長い連載となってしまいました。
予定では一か月ほどで終わらせる予定だったのですが……。

もう五月になって少しずつ暑い日も増えてきましたが、次から連載する予定の「On the Top of That Mountain第二章」もまた夏休みの話になります。
九月から連載してきたこの話ですが、ついに季節が追いついてきたことに、びっくりしています。
このまま追い抜かれるかもしれない……とか思うと目が回りそうです。

今後の予定などについては、また新しく記事を書かせていただきます。

それでは改めまして、読んでいただき、本当にありがとうございました!!
まだまだ未熟ではありますが、今後もよろしくお願いします。


grho拝


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