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On the Top of That Mountain(長篇)《連載中》

On the Top of That Mountain《間章1》【第十二話ノ壱】

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《12 最終話》

 みんなで昼食を食べた後、いろいろと事件は起こりつつもなんとか僕たちは浴衣に着替えた。
 こんなにもたくさんの人間で、しかも浴衣を着てどこかに出かけるというのは、本当にひさしぶりだ。浦川と出会ってから、僕はなんどもその「ひさしぶり」な体験をしているような気がする。
 ありがたいというべきなのか――迷惑というべきなのか。それは明白だ。前者に決まっている。この夏休み、結局のところなにか楽しいことがあったかと言われると、秘密基地から始まる浦川との出会いと言わざるをえないからだ。
 楽しみに行ったわけでもなんでもないけれど、それはどこか、僕が物語の主人公にでもなったような……そんな時間だったように思う。そして、今もそうだ。時間が濃く凝縮されて流れている。

 あたりはますます暗くなってきていた。
 空に輝いていた残光も消え、少し気温の下がった風が田んぼの間を吹き抜け木立の間へと消えて行く。
 田んぼと山に挟まれた道をしばらく行くと、やがてポツポツと光る提灯が見え始めた。道の両脇に杭を立てて糸を引き、そこからぶらせげているらしい。
 更にもう少し行くと、一つ一つの提灯をぶら下げ、それにチャッカマンらしき物を使用して灯りをつけている人が見えてきた。頭に鉢巻をしたおじさんだ。作業中だからか、半袖半ズボンで、腰から作業用の小さなバッグを吊り下げている。
「あ、紗慧ちゃんじゃねぇか」
 突然おじさんが、顔をあげて言った。
「そんなに着飾って、なにやってんの? デートか?」
 どうやら浦川の知り合いらしい。
 親しみのある言葉の響きからして、ずいぶんと親交が深いと見える。
「もう、なに言ってんの。違うから」
 浦川が軽くそれを流し、立ち止まった。つられて、僕たちも立ち止まる。その途端おじさんと目があった。あわてて頭を下げる。
「あれ……もしかして、ホントにデートか?」
「違うから! その……友達」
 浦川が、ちらりとこちらを見た。
 その視線に何かこめられているような気がするが、僕にはくみ取れない。すると、横で見ていた姉さんが、何か判ったようなそぶりで僕の袖を引いた。
「行くよ」
 小声でささやき、
「それじゃ、私たちは先に行くから。さっき言ってたところで……八時くらいに、また」
 いつのまに打ち合わせをしていたのか、そんなことを確認してさっさと歩き出した。
 僕もあわててその後を追う。
「なにか……あった?」
 聞こえるはずはないとわかっていながらも、つい小声になってしまう。
「とくに、なにも?」
「じゃあ、なんで先に……?」
 姉さんが、なんで分からないんだ、という顔をして振り返った。
「アンタだって、他の友達と歩いてる時に、その人のことを知らないもう一人の友達と会ったら、気まずいでしょ?」
「いや……別に」
 普通に引き合わせればいいのではないだろうか。
 そう言うと、
「全部の友達が、そんなに単純だったらね」
 と返ってきた。
「まぁ、細かいことは分からなくていいから。それにこれは私のおせっかいっていう可能性も十分にあるし……でもとりあえず、やってしまったことにはこだわらずに先に行くべし、よ」
 そう言って、下駄をカラカラならしながら姉さんは足を速める。
 どこから出してきたんだろうと、改めて意識した下駄について思いながら、僕もそのペースに合わせた。
 道の両脇では、鳴り響くカエルと虫の声に包まれて、提灯がいくつも浮かんで道を照らしていた。

          *

 神社に近づくと、ますます人が増えた。
 ここにこんなにもたくさんの人がいたのか、と思うほどに多い。
 それぞれ手にヨーヨーを持ったり、金魚を下げたり、綿あめを持ったりしながらさかんに話している。すでに夏祭りも始まっているようだ。
「覚治、アンタなにが食べたい?」
 突然姉さんが聞いてきた。
 そりゃ焼きそばを――と言いかけて、
「いや、自分で買うからいいよ」
 慌てて自分の立場を思い出す。
 十六にもなって、僕は何を言ってるんだ。
「いいよ、今日は私が奢るから」
「別に大丈夫だって」
「いや、奢る」
「いらない」
「奢らせろ」
「ヤダ」
 そんな問答を繰り返した後、姉さんが一つため息をついた。
「たまには、姉ヅラさせてくれっていってんの」
 その言葉がやけにさびしく響いたので、僕はそれに返すべき言葉を失ってしまった。
 それにしても、あまりにもらしからぬ言葉だ。
 むかし、どんな祭りなんかに行っても、親から預かった金を独り占めして「年上の権限」とか言って威張っていたのは誰だったのだろう。
 ――いや、たまには、どころか今までこんな風に振る舞ったことなんて、今までに一度もあったような気がしない。なにかが、必ず裏にある。
「……何をたくらんでんの?」
 ジトッと言うと、姉さんがあからさまにビクッとした。
「え、……なに?」
「奢ろうとする、その心は?」
「善意」
「嘘つけ!」
 しれっと言い放ったその言葉に突っ込む。すると、姉さんは観念したように肩をすくめた。そしてやれやれという風に手を振る。
「疑い深いなぁ」
「らしくないことをしようとするからだって」
 寝ころびながら暇つぶしとして、僕に蝉取りに行かせた人間の言うこととは到底思えない。
「実はね……」
 そう言いかけたから、姉さんはいったん息を吸った。
「この前、ついにバイト始めたからさ。それで給料が下りたし――誰かに奢りたいな、って」
 それを聞いて、僕はなんだか納得してしまった。なんだかわかるような気がする。まぁ――とても子供っぽいけれど。
「――良かろう。奢られてやる」
 わざと偉そうな口調で言う。
 神社の石段までたどり着いたところだった。
「じゃあ、まずは焼きそばか!」 
 姉さんがやけに張り切った声で言って、速足で石段を上る。
 そのあとを追いかけながら僕は、一つのことに思いをはせていた。

 ――夏祭りに、焼きそばってあるんだろうか……。



  










ここまで読んで頂き、本当に有難うございます。
連載してきましたOn the Top of That Mountainの間章1は、次の話で最終話となります。
UPはおそらく明日5月6日中にさせていただくことになります。

ではではっ


grho拝

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