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On the Top of That Mountain(長篇)《連載中》

On the Top of That Mountain《間章1》【第八話】

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《8》
 


 晴天の下で、神社の榊が風に揺れていた。緑の穂を伸ばし始めた稲が、風の痕跡をその上に残していく。
 やっぱりいい場所だ。
 老後に住みたい場所ランキングの候補に入れてもいいかもしれない。
 そんなことをふと考え、また足を進めた。目的地は、昨日の秘密基地だ。人の秘密基地に勝手に踏み入るのはどこか気が引けるけれど、それ以上に好奇心が優っていた。
 ――何かあるかもしれない。
 そう思うと、年甲斐もなくワクワクしてしまう。
 しかし、それでも一応良心の呵責は感じて、外からのぞくだけにしておこうと決めていた。
 何しろ前回は、覗くどころではなかったからだ。
 ナイフをもった少女に追いかけられ、田んぼに落ち、おじいさんに怒られと思ったら、家では姉さんに問い詰められる。そんな、僕の人生の中ではほとんどトップに位置するくらいのドタバタした一日だった。
 あぜみちに入る前に、あのおじいさんがいないかどうか見渡したが、幸い人影はなかった。
 念のためにもう一度見渡してから、足を踏み出す。ちょっと水分をすったねっとりとしつつも弾力のある土の感触が、靴底を通じて足に伝わってきた。うっかりすると、踏み外してしまいそうだ。
 昨日の二の舞にならないように、慎重に歩いて行くと、ようやく秘密基地への入り口へとたどりついた。
 その周辺の田んぼの稲には、泥の後がしっかりと残っている。泥もぐちゃぐちゃで、直したつもりが全然直っていないことに愕然とした。
 しかし、メインはそこではない。この奥なのだ。
 おそるおそる身を屈め、木と草のトンネルの中に足を踏み入れる。そろりそろりと歩いて行くと、ふと足元でぱきりと音がした。
「うおっ!」
 それに、ビックリして思わず声を漏らしてしまう。
 ただ、細い木の枝を踏んだだけなのに、なんでここまで過剰な反応をしなければならないのか。自分が分からない。
 緊張しているのだろうか。
 しているとしても――何に?
 馬鹿らしい。考えすぎてはダメだ。今しなければならないのは、足を前にすすめることのみ。
 どこか自分に酔いながら、僕は進んでいった。
 その声のようなものが聞こえたのは、それから少し進んだ時の事だった。
「……ずっ……、んっ……」
 なにかをすすり上げるような音だ。
 もしかして、奥に誰かいるのだろうか?
 いや、いてもおかしくはないはずだ。ここは、僕の秘密基地ではなく、人のモノなのだ。むしろ、いるべきではないのは、僕の方だ。
 どうしよう、引き返そうか。
 足を止めて、考えた。後ろを振り返ると、曲がったトンネルの先からわずかな光が届いている。
 このまま引き返しても、昼には浦川がくるはずだ。それを考えると、ここは決して冒険するところじゃない。
 僕は踵を返した。
 後ろから聞こえてくる音が、しだいに消えていく。
 外に出ると、ずっと曲げていた腰を伸ばしてうーんと伸びをした。目の前を、風が吹き抜けていった。

「どうかした? なんか、やけに機嫌が悪いけど」
 二人でテーブルを囲み、昼ごはんのソーメンをかき込んでいたら、姉さんがそう言った。
「別に……」
「あ、そういうのうっとしい」
 ぶすっと答えると、姉さんが批判的な声を上げる。
「昨今、コミュニケーションの取れない若者が問題になってるんだからさ。ケータイばっかり眺めて、何を聞いても、『いえ』とか『はい』とか、『別に』とかしか答えない、ってやつ」
 突然博識な口調になって、そんなことを並べ始める。
「さぁ、答えなさい。人との関わりを断っちゃだめなんだよ」
 そう言い終えると、姉さんはあきらかに作りものと分かる笑顔を浮かべた。
 盛大にお説教をされたが、別にテンションが低い理由はそんな大したことではない。
 ただ、帰り道にまたあのおじいさんに捕まって「性懲りもなくまた来やがって。犬は三日経てば恩を忘れるというが、それよりひどいな」と理不尽な説教を喰らったのだ。
 確かに昨日あんなことをしておいて、またその場所にノコノコやってくる僕が悪いのだが、二日連続で捕まるとささすがに気分が萎える。
 それを説明すると、姉さんはあきらかにがっかりとした顔をした。もっとなにか、ドラマチックな展開を期待していたに違いないが、残念なことにこんな田舎に住む僕のような男子高校生に、そんなことはめったにありえない。
 所詮、おじいさんに怒られる位が関の山だ。
「それにしても、覚治。あんた、アホじゃない?」
 姉さんが呆れたように言う。
 分かっていたことでも改めて言われると腹が立つ。
 今日は二度と口を聞いてやらねぇぞ、と心の中で誓いソーメンを口の中に詰め込んだ時だった。
 ――呼び鈴がなった。
 僕と姉さんは顔を見合わせ、箸を置いて玄関に向かったのだった。




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