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On the Top of That Mountain(長篇)《連載中》

On the Top of That Mountain《間章1》【第六話】

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《6》



 家の呼び鈴を鳴らす、というある意味貴重な体験をした。
 うちは基本的に戸締りをしないことが多く――というのは家に誰かしらがいつもいるからだが――いつでも勝手に出入りできるようになっている。こんな町のはずれにまでやってくる人も少ないから、泥棒にも狙われないだろうという、とても楽観的な考え方もその下地にある。
 ピンポーンという音が鳴り、しばらくすると慌てて起き上がる音がする。
「はあい、ただいま」
 とドアを開けて出てきた姉さんの顔は、僕達の姿を認めた途端にわかりやすく歪んだ。
「――え? なに、何があったの?」
 それもそうだろう。
 呼び鈴がなって外に出たら、弟が泥まみれで立っていたのだから。その上で、泥まみれの少女とチビ達二人を連れているのだ。驚かないわけがない。
「いや、まあ色々と聞きたいことがあるとは思うんだけどさ、とりあえずこの人達にシャワーと着替えを貸してやってくれねぇ?」
 事前に準備してていたセリフをそっくりそのまま言うと、
「わ、分かった」
 姉さんは気圧されたように頷き、ちょっと裏に回って、と叫んで引っ込んだ。
 さすがにこの格好のままあがるわけには行かないので、裏庭の水道で軽く泥を落とせということだろう。炎天下に晒されて火照った身体に、冷たい水道に水は気持ちいいだろうな、と想像しながら浦川たちにその旨を説明する。
こくりと、首を縦に振る浦川と、やはり歓声を上げるチビ達を引き連れて裏庭に行くと、姉さんが待っていた。
「着替えは貸すから、心配しないでね」
 開口一番にそう言う。
「あ、ありがとうございます」
 そう頭を下げる浦川見て、初めて着替えの存在に気がついた。そういえば、どうするつもりだったのだろう。途中で家にも寄らなかったし、突然顔も知らない人の家にシャワーを借りに来るなんて、高校生の女子のすることじゃない。
 ともあれ、とにかくまずは泥を落とすことだと頭を切り替える。
 ホースの先をつぶして水を高く撒き散らすと、心地よい感触と共に空に虹がかかった。

「――で、何があったのか、説明してもらいますからね」
 テーブル越しにこちら側に座る僕と浦川を見つめながら、姉さんが言った。チビ達は、仲良く庭で遊んでいる。一方で年上組は尋問会だ。
「何があったと言われても……」
 ちらりと浦川を見ると、同じく困った表情をしている。そもそも僕達は、お互いのことすらよく知らない。
「説明してもらいますからね」
 姉さんが同じ言葉をもう一度繰り返した。
「説明しなくてもいいんじゃない?」
 逃げを打つと、
「私には知る権利があるから」
 と来る。
 なんで? と聞き返すと、
「面白そうだから」
 と返ってきた。
 思わずため息をつく。目を逸らして麦茶を飲み干し、ふうと息をついた時には矛先はすでに浦川に向いていた。
「そ、その、この度はご迷惑を……」
 なにがあったの、と聞かれてこの答えは、素なのだろうか。
「いいよ、ぜんぜん。それより何があったのか、聞かせてくれない?」
 姉さんがさらりと遮って同じ質問を繰り出す。
「あ、はい。わかりました。でも、とても説明しにくいんです。簡単に言うと……」
 そこでちらりと僕を見る。もう、なるようになれ、だ。
 肩をすくめてみせると、浦川はつばを飲み込んでコクリと頷き、そのまま先を続けた。

「たまたま道でで会って、いろいろことがあって、田んぼに落ちた――って感じです」

「ちょっと待って。ぜんぜん意味がわからないんだけど。なにが、どういろいろとあったの?」
「そこは、ちょっと……」
 あの秘密基地のことは、できるかぎり人に話したくないのだろう。チビ達に言わないように言いつけていたくらいなのだから。
「だから、そこが聞きたいんじゃない」
 しかし、姉さんも大概に図々しい。
「ちょっと、困ってるよ」
 助け舟を出すと、浦川がぱっとこちらを振り向いた。すがるような目付きだ。彼女の尊厳は僕にかかっていると言ってもいい。
 さぁ、来い。どんな攻撃が来ても耐え切ってやる。そんな一大決心をしたものの、中々その攻撃はやって来なかった。
「まぁ、……話しにくいならいい。ごめんね」
 姉さんが折れた。こんな気遣いが姉さんの心に宿っていた事自体が、大きな驚きだ。
「いえ、こちらこそ、きちんと説明できなくてごめんなさい」
 浦川もきっちり頭を下げる。
 その間に挟まれ、僕は居場所を失ってしまった。しかたなく、交互に二人の顔を見比べながら、その先の展開を待つことにする。
「じゃあ、私帰ります。明日、服を返しに来ます」
 すると、浦川がそう言って立ち上がった。





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